妙法蓮華経分別功徳品ふんべつくどくほん第十七


  その時に会中えちゅうの者たちは佛の寿命が無量であることを聞き 大いなる功徳を得たのです。
  そして釈尊は弥勒みろく菩薩に語られました。
  
  「弥勒みろくよ。私がこの佛の寿命が長遠じょうおんであることを説く時、
   多くの 実に数多くの者たちが仏智に目覚め、阿耨多羅三藐三菩提あのくたらさんみゃくさんぼだいを得たのです。
   そして、縁有る者は仏法を説き始めることでしょう。」

  その時、天からは華々が降り注ぎ、周囲には香が満ち、妙なる伎楽ぎがくが聞こえてきました。
  そして、無数の佛土から梵天王ぼんてんのうが来られて、佛の周囲に高貴な香りをかれたのです。
  菩薩たちは、七寶に飾られた旗を持ち、詩偈しげを以って佛を讃えました。
  そうして佛の御名みなは、十方の国々に響き渡ったのです。

  釈尊は弥勒みろく菩薩に告げられました。
  
   もし、善き者たちが仏道を求めるが故に、もろもろの菩薩に供養し、戒をたも
   忍辱にんにく精進しょうじん禅定ぜんじょうなどのぎょうを行い、長きにわたって無上道を極めんとしたとしましょう。
   しかし、我が寿命の長遠じょうおんを聞いて、一念も信解しんげするならば、
   その福は、かのぎょうを行う者にぐるのです。
   善き者たちは、私が未来世までも寿命をたもち、衆生を導くことを聞いた時
   良く、この佛語をかいして、疑いを生ずることはないでしょう。
   
   弥勒みろくよ。
   この経典を良く信奉するならば、
   その者は、佛が霊鷲山りょうじゅせんにあって、諸の菩薩と共に、法を説く様を見るのです。  
   また、娑婆世界の地が平坦へいたんになり、黄金の道が八方へと広がり
   そこにそびえる楼閣ろうかくの塔に、数多くの菩薩たちがいるのを見ることでしょう。
   この経典を聞き、このように観ずるならば、それを、まさ深信解じんしんげの相というのです。

   この者は、佛の為に塔寺とうじを建て、僧に供養するまでも無く、
   すでに、梵天ぼんてんまで至る、七寶の塔を建て、多くの僧坊そうぼうを築いて、
   僧に供養したことになるのです。
   ましてや、この経をたもち、布施ふせ持戒じかい忍辱にんにく精進しょうじん一心いっしん智慧ちえを、
   行ずる者の徳は最勝さいしょうにして量り知れぬものです。

   もし、この経を読誦どくじゅ受持じゅじして、他人の為に説き
   書写して塔を築き、僧に供養するならば、
   また、いからず、悪口あっこうを言わず、自らのおごれる心から遠く離れるならば、
   その者は、まさに、阿耨多羅三藐三菩提あのくたらさんみゃくさんぼだいに近づくのです。
   この善き者の在る処、そこに塔を建てなさい。
   一切の天人が皆、佛塔ぶっとうの如く供養することでしょう。


   (妙法蓮華経随喜功徳品第十八へ続く)

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