妙法蓮華経普賢菩薩勧発品ふげんぼさつかんぼっぽん第二十八   


 しばらくすると霊鷲山りょうじゅせんの地は震え、天からは華々が舞い降りてきました。
 そんな中 東方の国より普賢ふげん菩薩は来られたのです。
 普賢ふげん菩薩は霊鷲山りょうじゅせんに至ると釈尊を礼拝し、このように言いました。

 「世尊、私は寶威徳上王ほういとくじょうおう如来の国に於いて、
 無量無辺百千万億の菩薩と共にこの法華経の教えを聴聞しておりました。
 そこでひとつお聞きしたいことがございます。
 釈尊滅後めつご、善き者たちは、どのようにしてこの法華経を学ぶべきなのでありましょう。」

 釈尊は
 「善き者たちが次の四法しほうを修めるならば、まさに法華経を得るでしょう。
  一には、諸佛しょぶつに護られることを得ること。
  二には、諸々もろもろの徳を得ること。 < br>  三には、※1正定衆しょうじょうしゅに入ること。
  四には、一切の衆生しゅじょうを救う心を起こすこと。
 これらを身にそなえるならば必ずこの経を得るのです。」

 これを聞いた普賢ふげん菩薩は
 「世尊、後の濁悪世じょくあくせの中に於いてこの経典を受持する者を私は護るでありましょう。
 そこではしき者がこの経典を説く者の落ち度を探すこともありましょう。
 そんな時、私は六牙ろくげ白像王びゃくぞうおうに乗ってその所へ至り、
 その身を護り、心を安穏あんのんならしめることでしょう。
 またこの経典を説く者が、その一偈一句いちげいっくを忘れた時は、
 私はそれを教え、共に読誦どくじゅすることでしょう。
 またこの経を持つ者に私は陀羅尼呪だらにじゅを与えます。

  阿檀地あたんだい 檀陀婆地たんだはだい 檀陀婆帝たんだはてい 檀 陀鳩?隷たんだくしゃれい 檀陀修陀隷たんだしゅだれい
  修陀隷しゅだれい 修陀羅婆底しゅだらはち 仏駄波羶禰ぼっだはせんねい 薩婆陀羅尼さるばだらに 阿婆多尼あばたに
  薩婆婆沙さるばばしゃ 阿婆多尼あばたに 修阿婆多尼しゅあばたに 僧伽婆履叉尼そうぎゃはびしゃに 僧伽涅そうぎゃね
  伽陀尼きゃだに 阿僧祇あそうぎ 僧伽波伽地そうぎゃはきゃだい 帝隷阿惰てれあだ 僧伽兜略そうぎゃとりゃ 阿羅帝あらてい
  波羅帝はらてい 薩婆僧伽さるばそうぎゃ 三摩地さんまじ 伽 蘭地きゃらんだい 薩婆達磨さるばだるま 修波利刹帝しゅはりせってい
  薩婆薩捶さるばさった 楼駄?舎略ろだきょうしゃりゃ アトギャダイ 辛阿毘吉利地帝しんなびきりだいてい

 この者は女人にょにんに惑わされることなく私が常にその身を護るでありましょう。
 この閻浮提に於いて法華経の行を修める者は私の行いを顕わす者です。
 多くの諸佛にそのこうべでられることでしょう。
 また書写するならば、命終えた後 天女と共に刀利天とうりてんへと生まれるのです。

 この経を受持する者には無尽むじんの功徳があるのです。
 それ故に私はこの経を守護し広く流布致します。」

 すると釈尊は
 「かなかな
 普賢ふげんなんじはよくこの経を護り、人々を安穏ならしめんと誓ってくれた。
 あなたはすでに上可思議の功徳と慈悲をそなえているのです。
 普賢ふげんよ。
 この経を受持する者はすなわち釈迦牟尼佛を
 その教えを聞き 諸佛がそのこうべでるのです。
 その者は浮世の快楽に惑わされず善き福を得ることでしょう。
 この経典を心にたもつ者を見てその悪口あっこうを述べ笑う者は
 その顔や身にしきやまいが生じることもあるのです。
 それ故にこの経典を受持する者を深く敬いなさい。

 この普賢菩薩勧発品ふげんぼさつかんぼっぽんが説かれた時、恒河沙ごうかしゃの菩薩は
 百千万億旋陀羅尼せんだらにを得て、あらゆる世界の菩薩は普賢ふげんどうを修めたのでした。
 そうしてこの世の一切の諸天、諸菩薩、あらゆる者はみな 大いに歓喜かんぎして
 この釈尊の御言葉を胸に抱き 礼拝して 霊鷲山りょうじゅせんより立ち去ったのです。

  妙法蓮華経巻第八

   法華経 通解(了)

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 ※1 必ず悟りに至ると心を定めた状態