その時に釈尊は得大勢菩薩に告げられました。 得大勢よ、無量無辺不可思議阿僧祇劫の昔 威音王如来という佛が おられました。 世を離衰といい、国を大成といいます。 威音王佛は、四諦・十二因縁・六波羅蜜の法を説いて 天・人・阿修羅らを仏智へと導いておりました。 この威音王如来の寿命は、四十万億那由陀恒河沙劫でありました。 その後 、正法は、大地の砂粒の如く、像法は、四天下の微塵の如く続いたのです。 そうして、人々を導き続けられた後、滅度されました。 やがて、亦、威音王如来が出現されました。 その後、二万億の佛が顕れました。 すべて威音王如来といいます。 その最初の威音王如来が滅度され、正法が滅して後、 像法の中において、小乗の論議に耽る増上慢の比丘たちがおりました。 そして、その時に、常不軽という、一人の菩薩比丘がいたのです。 かの比丘は、出会う人々全てに手を合わせ、このような言葉をかけ続けました。 我れ深く汝等を敬う 敢て軽慢せず 所以は何ん。 汝等 皆菩薩の道を行じて 當に作佛することを得べし この比丘は、経典を読誦することなく、但、礼拝を行い続けたのです。 この言葉を聞いた、心不浄なる比丘たちは、彼の悪口を、語りふらしました。 「この無智の比丘は、汝を軽しめずと言って、我等に授記するが、 このような虚妄の授記な ど、何の意味があろう。」と言って罵り、 杖や石でもって彼を打ちつけたのです。 しかし常不軽菩薩は、その打擲を走り避けては、彼らへの礼拝を続けました。 そうして、この比丘は、命尽きる時、 虚空の中に於いて、威音王如来の説かれた、二千万億の法華経の偈を聞いて、 ※1六根清浄を得、その寿命を増すこと二百万億那由陀歳でありました。 そして、他の人々の為に、この法華経を説いたのです。 法の論議に耽る者たちを教化して、阿耨多羅三藐三菩提へと導いていきました。 やがて、常不軽菩薩は命終えた後、日月燈明如来という名を持った二千億の佛に出会い、 その世において、この経典を説きました。 この因縁を以って、次に雲自在燈王如来という二千億の佛に出会ったのです。 その佛の世に於いては、心身清く、また畏れる心無く、人々にこの経典を説いたのでした。 得大勢よ。 常不軽菩薩は、このように諸佛を供養し、多くの善 根を種えた後に 再び千万億の佛に出会ったのです。 それぞれの佛の世に於いてこの経典を説いた後に、かの菩薩は當に成仏を得まし た。 得大勢よ。 その常不軽とは、私のことなのです。 過去世に於いて此の経を受持・読誦し、 解説することがなければ阿耨多羅三藐三菩提を得ることはできなかったことでしょう。 かの※2著法の者たちは 私を軽んじたが故に、二百億劫の間、佛に出会わず、 160億年もの間、阿鼻地獄で大苦悩を受けました。 しかし、その償いの後に、常不軽の教えに出会ったのです。 その者とは、この会中にいる千五百人の菩薩や比丘・比丘尼たちに他なりません。 當に知るべし 是の法華経は大に諸の菩薩摩訶薩を饒益して 能く阿耨多羅三藐三菩提に至らしむ 是の故に行者 仏の滅後に於て 是の如き経を聞いて 疑惑を生ずることなかれ 応當に一心に 広くこの経を説くべし 世世に佛に値い たてまつりて、疾く仏道を成ぜ ん (妙法蓮華経如来神力品第二十一へ続く) |